川沿いの寮の光景は恰も一枚の彩色写真を見るようにハッキリと妾の記憶に存している。
その頃寮の中に設えられた座敷牢のような太い格子の内側で、毎日毎日温和しく寝ていた幼童
二月十九日。――呪われてあれ、今日授かりたる三人の双生児!
二人ならば双生児だし、三人ならばどうしても三つ子といわなければならない。
三人の双生児という有り得べからざる名称のうちに、何か異状の謎が語られていることになる。
あれは今からザット十五六年も前、四国の徳島で買った子だったがネ。
当時はなんでも八つだといったネ。病身らしい子で、とても育つまいかとは思ったが、肩のところにある瘤が気に入って買ってしまったのさ
とにかく何処の国にもある人売稼業の男から買った
娘と名はついているが、本当は安宅真一という男なんですが……あの肩のところに傷跡の残っている……
真一が頼ってきて遂に死んだ
「ほら、これが真二の首だよ」
「ああ、あの子だ」
色こそ褪せて居るけれど、彼の長く伸びた頭髪は、可愛いカンカンに結って、その先に色を失った三つのリボンが静かにアルコールの中に浸っていた。ああ、なんという可憐な顔だろう。
そうだ、今腹に宿っている両頭の子供を下すのは思い止まりたい。
例えそれが畸形児であろうとも、妾が母たることに違いはないのだ。
血肉を分けた可愛い自分の子に違いないのだ。流産して殺すなんてそんな惨たらしいことがどうして出来ようか。
妾は貞雄が向うの標本を眺めている隙に、独りで教室をドンドン出ていった。