田舎教師 田山花袋

曇天の広い空の下、平野の径を歩く人物の後ろ姿。

四里の道は長かった。その間に青縞の市のたつ羽生の町があった。

四月二十五日

四月二十五日と前の日に続けて書いて、ふと思いついて鉛筆を倒にして、ゴムでゴシゴシ消した。今日は少なくとも一生のうちで新しい生活にはいる記念の第一日である。

六月一日、今日成願寺に移る。

蛙の声に家も身も埋めらるるように感じた。

「あゝわれつひに堪へんや、あゝわれつひに田舎の一教師に埋れんとするか。明日! 明日は万事定まるべし。

行田から羽生、羽生から弥勒という平凡な生活はまた始まった。

一時間ほど前には清三はその行列の万歳の声を聞いて、「今日は遼陽占領の祭りだね」と言って、そのにぎやかな声に耳を傾けていた……。

今、またその行列が通る。万歳を唱える声がにぎやかに聞こえる。

医師の注射はもう効がなかった。

「林君! ……林君! もう、とうとうだめでしたか!」

万歳! 日本帝国万歳

昼間では葬式の費用がかかるというので、その翌日、夜の十一時にこっそり成願寺に葬ることにした。

提灯が一つ造り花も生花もない列をさびしげに照らして、警察の角から、例の溝に沿った道を寺へと進んだ。

その前で人目も忘れて久しく泣いていたということをかみさんから聞いた。

「あの娘は林さんが弥勒で教えた生徒だとサ」

秋の末になると、いつも赤城おろしが吹きわたって、寺の裏の森は潮のように鳴った。その森のそばを足利まで連絡した東武鉄道の汽車が朝に夕べにすさまじい響きを立てて通った。

『田舎教師』は、実在した一人の青年教師が遺した日記をもとに書かれています。胸の一行は、清三が成願寺に移った最初の夜、日記をつけながら聞いた蛙の声の場面です。

この一枚
白い長袖シャツ。曇天の平野を歩く人物の写真に、「蛙の声に家も身も埋めらるるように感じた。」の縦書き。
胸には曇天の平野と、あの夜の一行。

胸にあるのは、成願寺の最初の夜の一行です。事件のないまま人が生きて消えていく、その静けさごと、いまの埼玉の平野の実写と組みました。

つくり手は47storiesJP。埼玉には、この作品のこの一行を選びました。

未販売です。

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いまの埼玉
曇天の広い空の下、平野の径を歩く人物。遠くに町並みが低く連なる。
いまの埼玉の平野の実写。
人物は、生成AIが描いた架空の巡礼者で、実在しません。
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第三十七回で、『田舎教師』の埼玉を語っています。

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