
ロケーション
熊本県
画家が山里へ入り、恋愛や社会の情念から距離を取って、美を観る態度を探る。事件は少ないが、風景、俳句、古典、絵画論が流れ込み、思索が物語を駆動する。人間的すぎる感情を避けようとするほど、逆に人間の影が滲む構造になっている。旅と芸術論が溶け合い、読む側も美の立ち位置を試される。

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
英訳
Reason makes enemies.Let emotion steer, and you are swept away.Stand on pride, and life grows cramped.In any case, it is hard to live in this world.
サマリー
引用文の概要と背景
この一節は、小説『草枕』の冒頭の一文です。 「山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。」という有名な書き出しに続いて語られる、主人公(画家)の独白であり、この作品全体のテーマである「非人情」の世界観を端的に示した名文です。
文脈
主人公は、俗世間の煩わしさから逃れるために、画材道具を背負って春の山道を歩いています。 彼は、人間社会(人の世)がいかに生きづらい場所であるかを分析しています。理性、感情、意志のどこに重点を置いても、人間関係や社会生活には必ず摩擦や不自由が生じるという、逃れようのない現実を嘆いている場面です。
解説
「智(ち)に働けば角(かど)が立つ」
理屈や理性だけで物事を割り切って行動すると、他人と衝突したり、人間関係がギスギスしたりする。
「情(じょう)に棹(さお)させば流される」
他人の感情に配慮しすぎたり、自分の情に流されたりすると、自分の足場を失って、どっちつかずの状況に追い込まれてしまう。(「棹さす」は本来「流れに乗って勢いよく進む」意味ですが、ここでは川の流れ(情)に舟を操ろうとして、かえって流されてしまう様を指しています)
「意地を通せば窮屈(きゅうくつ)だ」
自分の主張や意志を頑固に押し通そうとすると、周囲と対立してしまい、かえって自分の居場所が狭くなり、息苦しくなる。
「とかくに人の世は住みにくい」
理性、感情、意志、どう振る舞っても結局この世は生きづらいものであるという結論です。
この諦観(ていかん)が、主人公をして「住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる」 と思わせ、詩や絵画といった芸術の世界(「非人情」の世界)へと心を向かわせる動機となっています。
Spotify
T-shirt Design

この作品の商品は下記よりご購入いただけます。
