
土地の名を掲げつつ、具体の風景と象徴的な心象を往復する抒情が中心にある。地名がただの場所ではなく、記憶や憧れ、失われた時間の受け皿として機能し、読み手の中でも遠景が広がる。音の運びや語彙の選択に、浪漫的な香気が漂い、感情を直接説明せずに雰囲気で染めていくタイプの作品。

人を魅するの力ある、さながら夢幻の境のごときもの
英訳
A power to charm,like the boundary of a dream.
サマリー
引用文の概要と背景
この一節は、第三章の冒頭、著者が唐津の「虹の松原」の絶景を目の当たりにした瞬間の感動を記した言葉です。
文脈
著者は満島(みつしま)から東へ向かい、浜崎へと至る道中で、松浦川と玉島川に挟まれた海岸線を目にします。 その風景が持つ、理屈では説明できない圧倒的な美しさに心を奪われ、「一体何によってこれほど直ちに人の心を魅了する力があるのか」と自問し、その光景を「まるで夢か幻の境界のようだ」と譬(たと)えています。そして、その正体が「これ虹の松原!」であると感嘆符をもって提示します。
解説
「人を魅するの力」とは、一目見ただけで抵抗しがたく心を引きつけられる、風景の持つ魔力のような魅力を指しています。 「さながら夢幻の境(むげんのさかい)のごときもの」とは、眼前の景色があまりに美しすぎて、現実の世界とは思えず、まるで夢や幻の世界に迷い込んだかのようだという意味です。 唐津湾の海岸線に続く広大な松林の美しさを、現実を超越した幻想的な体験として賛美した、詩人・蒲原有明らしい格調高い表現です。
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