
ロケーション
高知県芸西村
任地から都へ戻る旅を、仮名文で記した初期の日記文学。女性の語り手を仮構して、感情の揺れや涙、喪失を表現し、和歌を織り込んで旅程以上の内面記録にする。海路の不安、土地の風俗、同行者との距離が細やかに描かれ、移動が心の変化として残る。古典の枠内で、個人の声が立ち上がる瞬間がある。

男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
英訳
Men make diaries, they say. A woman intends to do so, too.
サマリー
引用文の概要と背景
この一節は、平安時代の文学作品『土佐日記』の冒頭の一文です。 日本文学史上、最も有名な書き出しの一つであり、仮名日記文学の幕開けを告げる重要な宣言でもあります。
文脈
作者である紀貫之は男性(当時の高官)ですが、この日記では「女性」という仮面(ペルソナ)を被って書いています。 当時、男性が書く「日記」といえば、公務の記録などを漢文で記すのが一般的でした。しかし、貫之は任国(土佐)から帰京する旅の心情や、亡くなった幼い娘への哀惜を、より自由で情緒的な言葉で表現したいと考えました。 そのために、あえて「女性の手によるもの」という体裁をとることで、漢文ではなく、やわらかな「仮名文字(ひらがな)」を使って書くことを正当化したのです。
解説
現代語訳すると、「男性というものが書くとかいう『日記』というものを、女である私も書いてみようと思って、筆をとるのである」となります。
- 「男もすなる」は、男性が公的な記録として書く漢文日記を指します。
- 「女もしてみむ」は、女性が使う仮名文字を用いて、私的な感情や出来事を綴ってみようという意図を表しています。
この一文によって、事実の記録にとどまらない、個人の内面や感動を書き記す「日記文学」という新しいジャンルが確立されました。
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