
ロケーション
香川県高松市女木町
昔話をそのまま英雄譚として肯定せず、征伐の暴力や正義の作られ方を皮肉に描き直す。鬼退治は勧善懲悪ではなく、力の論理として見えるようになり、読者の道徳感覚が揺さぶられる。軽い筆致なのに、後味は苦い。子どもの物語に見えるものの裏側に、近代の戦争感覚や宣伝の構造が透ける。

桃太郎はこういう罪のない鬼に建国以来の恐ろしさを与えた。
英訳
Momotaro brought the innocent Oni terror unknown since the nation's birth.
サマリー
引用文の概要と背景
この一節は、物語の第四章の冒頭にある一文です。 それまで平和に暮らしていた「鬼が島」に、桃太郎がついに侵攻を開始する場面です。
文脈
直前の第三章では、鬼が島が「天然の楽土」であり、鬼たちは琴を弾いたり踊ったりして平和に暮らす、人間よりも享楽的で罪のない種族として描かれています。彼らは人間を恐ろしい「毛だもの」として子供に言い聞かせていました。 そこに、「仕事に出るのがいや」だからという身勝手な理由で征伐を思い立った桃太郎が、犬・猿・雉という獰猛な動物たちを引き連れて襲いかかります。
解説
「罪のない鬼」という表現は、勧善懲悪という従来の桃太郎像を根底から覆すものです。 芥川版の桃太郎において、鬼たちは何も悪いことをしていません。それどころか、平和を愛する文化的な生活を送っていました。そこへ一方的に押し入り、殺戮と略奪を行う桃太郎は、正義の味方ではなく、平和な国を蹂躙する「侵略者」として描かれています。 「建国以来の恐ろしさ」とは、鬼たちの歴史上かつてないほどの惨劇(虐殺や暴行)が、桃太郎一行によってもたらされたことを示しています。近代日本の帝国主義や海外進出に対する痛烈な風刺と、一方的な「正義」への批判が込められた重要な一文です。
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