
ロケーション
山梨県甲州市
雪に閉ざされた一日の出来事を通して、貧しさのなかで生きる人々の矜持と傷つきやすさを描く。外の白さが、心の陰りや小さな希望を際立たせる。派手な事件より、会話の綾や沈黙が効いており、運命の重さが生活の細部に宿る。一葉らしい、情の深さと観察の冷静さが交差する。

我が故郷を離れしも我が伯母君を捨てたりしも、此雪の日の夢ぞかし。
英訳
Leaving my hometown and abandoning my aunt—it was all a dream of this snowy day.
サマリー
引用文の概要と背景
この一節は、随筆(小説的な色彩の強い作品)『雪の日』の結びの言葉です。 主人公(たま)が、降りしきる雪を眺めながら、過去に犯した過ちと、現在の孤独な境遇を嘆き、その全ての元凶と哀しみを雪に仮託して締めくくる場面です。
文脈
主人公は、雪の降る日に、育ての親である「伯母様」や、住み慣れた「薄井の家」を捨てて出奔した過去を持っています。 それは「師の君」と呼ばれる男性への思慕か、あるいは「禍(わざわ)ひの神」に魅入られたような衝動によるものでした。 今、再び雪の降る日を迎え、彼女はその時のことを回想しています。傘も持たずに飛び出したあの日の自分は、善悪の判断もつかない「まよひ(迷い)」の中にあったと振り返ります。
解説
「夢ぞかし」という言葉には、故郷を捨て、恩ある伯母を裏切ってまで走った自分の行動が、まるで雪が見せた幻影や、悪い夢であったかのような、現実感のない虚しさが込められています。 しかし、それは決して覚めることのない悪夢であり、今の自分の不幸な境遇の原因でもあります。 美しくも冷酷な雪が、彼女の人生を狂わせたあの日と同じように降り続く中で、過去の罪も現在の悲しみも、すべては雪の日の儚くも恐ろしい夢のようだと、諦念と深い悔恨を持って詠嘆している一文です。
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