
ロケーション
福井県坂井市三国町
故郷に咲く花を手がかりに、戻れない時間と、胸に沈殿した記憶を静かに掬い上げる抒情。直接の説明は少なく、匂い、色、気配が感情を呼び戻す。華やかな郷愁ではなく、手の届かないものへの諦めと愛着が同居する。短い言葉の間に、遠景の寂しさが広がっていく。

みづにうかべど空をとぶ
ふたつのつばさぬらさじと
かろきたくみのかもめどり
英訳
Floating on water, yet flying in sky. With two wings kept dry, The light, skillful seagull.
サマリー
詩の概要と背景
この一節は、詩集『故郷の花』に収められた短詩「みづにうかべど」の第一連です。
文脈
詩人は、三国町を流れる九頭竜川(くずりゅうがわ)の河口付近や日本海の荒波に浮かぶカモメの姿を眺めています。 厳しい冬の日本海や、戦争という暗い時代背景の中で、詩人は水面に身を置きながらも、決してその魂までは濡らさないカモメの姿に、ある種の気高さや精神的な理想を見出しています。
解説
「みづにうかべど空をとぶ」という逆説的な表現は、カモメの肉体は水面に浮かんでいても、その本質(魂や機能)はあくまで空に属していることを示しています。 「ふたつのつばさぬらさじ」という箇所には、飛翔のための翼(=詩人の精神や誇り)を、俗世間や苦難(=水)によって重く湿らせてはならないという、静かながらも強い意志(緊張感)が込められています。 「かろきたくみ(軽き巧み)」と称賛することで、現実に身を置きながらもそれに染まりきらず、常に高みへと飛び立つ準備を整えている孤高の精神性を、カモメの身軽な仕草に託して表現した名句です。
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