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石川 / 徳田秋声『挿話』

Tokuda Shusei “Sowa”
First published:1925
Location:Higashiyama, Kanazawa, Ishikawa, Japan

作家
徳田秋声

初出
1925年

人生の大事件ではなく、暮らしの一場面を切り取って、人間関係の澱や小さな自己欺瞞を浮かび上がらせる短編。語りは抑制され、劇的な決着より、言い残しや気まずさが尾を引く。だからこそ、登場人物の弱さがこちらの経験に接続する。生活の温度を保ったまま、近代人の孤独をじりじり照らす。

金沢市東山 ひがし茶屋街

そして一番寂しい道に立っているのは、何んといってもお絹であった。

英訳

And the one standing on the loneliest path was, after all, Okinu.

サマリー

引用の概要と背景

この一節は、第五章の最後、主人公の道太が、お絹やおひろと共に日々を過ごす中で、彼女たちの置かれている状況や性格の違いを深く理解した瞬間の独白です。

文脈

道太は、この落ちぶれた茶屋で暮らす姉妹(お絹とおひろ)の様子を観察しています。 妹のおひろは若く、頭の回転も速く、森さんという旦那(パトロン)もいて、不平を言いながらも自分の身の振り方を計算できています。一方、姉のお絹は40代半ばを過ぎ、独身で子供もなく、家も他人の持ち物であり、自分の力ではどうすることもできない閉塞感の中にいます。 道太は、今は一緒にいる彼女たちも、やがては離散しなければならない運命にあること、そしてその中で誰が最も救いようのない立場にいるかに気づき、この言葉に至ります 。

解説

「一番寂しい道」とは、将来の保証が全くなく、頼れる相手もいない孤立無援の状態を指しています。 他の姉妹たちは結婚していたり、パトロンがいたり、若さや計算高さを持っていたりと、何らかの「次」があります。しかしお絹は、気立ても良く上品ですが、生活力がなく、人に頼らなければ生きていけません。それにもかかわらず、彼女を支えてくれる確かな存在(夫やパトロン、財産)が何一つ残されていないのです。 この一文は、時代の流れに取り残され、没落していく家の最後の守り手として、静かに、しかし確実に孤独な老後へと向かわざるを得ないお絹の悲哀を象徴的に表しています 。

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