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新潟 / 小川未明『赤い蝋燭と人魚』

Ogawa Mimei “The Red Candle and the Mermaid”
First published:1921
Location:Gozu Coast, Joetsu, Niigata, Japan

作家
小川未明

初出
1921年

人間に預けられた人魚の子が、善意と欲のあいだで翻弄され、取り返しのつかない結末へ向かう童話。語り口は優しいのに、裏切りの冷たさが鋭く残る。異質な存在を利用する社会の残酷さと、それでも消えない情の可能性が同居し、子ども向けの形を借りて大人の倫理を刺す。

上越市 郷津海岸

女の人魚は、子供を産み落すために冷たい暗い波の間を泳いで、陸の方に向って近づいて来ました。

英訳

The mermaid swam through the cold, dark waves, approaching land in order to give birth to her child.

サマリー

引用の概要と背景

この一節は、物語の冒頭(第一章の最後)で、身ごもった人魚が、我が子の将来を案じて一大決心をする場面です。

文脈

北の暗く冷たい海で孤独に暮らしていた人魚は、お腹の子には自分のような寂しい思いをさせたくないと願います。「人間は魚や獣よりも人情があり、優しい生き物だ」と信じていた彼女は、人間たちに子供を育ててもらえば幸福になれるだろうと考えます。 そして、自分はもう二度と子供に会えないという悲しい運命を受け入れ、せめて子供だけは明るく美しい人間の町で暮らせるようにと、産み落とすために陸地を目指して泳いでいくシーンです 。

解説

母である人魚の、子供に対する深く献身的な愛情と、人間性善説に対する純粋すぎるほどの信頼が描かれています。 「冷たい暗い波の間」という表現は、人魚がこれまで生きてきた過酷な環境を象徴すると同時に、これから彼女と子供を待ち受ける、人間の欲望や裏切りという「心の冷たさ」を暗示しているようでもあります。 この純粋な願いが、後に人間のエゴによって踏みにじられ、悲劇的な結末(町が滅びるほどの祟り)へとつながっていく、物語の全ての始まりとなる重要な一文です。

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