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千葉 / 伊藤左千夫『野菊の墓』

Ito Sachio “The Wild Chrysanthemum’s Grave”
First published:1906
Location:Yagiri, Matsudo, Chiba, Japan

作家
伊藤左千夫

初出
1906年

少年期の淡い恋と別れを、回想のかたちで静かに語る。自然の匂い、季節の移ろい、周囲の視線や家の都合が、当人たちの感情を簡単に押し流していく。甘さだけでなく、言えなかった言葉の重さが残る。郷愁と痛みが同居し、初恋を人生の原風景として定着させる作品。

松戸市矢切 江戸川堤

宇宙間にただ二人きり居るような心持にお互になった

英訳

As if we were the only two souls in the universe.

サマリー

引用の概要と背景

この一節は、主人公の政夫(15歳)と従姉の民子(17歳)が、家から離れた畑へ綿を摘みに出かけた際(綿とり)の場面です。

文脈

日頃は年上の従姉という立場や、政夫の母をはじめとする周囲の目を気にして、素直に親しさを表せない二人。しかし、誰の視線もない秋の澄んだ自然の中で二人きりになり、無邪気な会話を楽しみながら作業をする中で、互いの淡い恋心が共鳴し合う瞬間を描いています。

解説

広大な宇宙に自分たち以外誰も存在しないかのような、外界から完全に遮断された二人だけの純粋で濃密な世界を表しています。 普段二人を縛り付けている世間体や家族のしがらみが一切消え失せ、魂だけで結びついているような至福の心境です。この静謐で絶対的な幸福感は、後に訪れる強制的な別離や民子の死という悲劇的な運命と鮮烈な対比をなし、物語の中で最も美しく、かつ切ない一瞬として輝いています。

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