
ロケーション
福島県猪苗代町
底本
「宮本百合子全集 第一巻」新日本出版社 1979(昭和54)年4月20日初版発行 1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
貧困のただ中にいる人々を「かわいそうな対象」としてではなく、生活者として描く視線が核にある。欠乏は人格を歪めもするが、同時に連帯や反発、微細な誇りも生む。社会の仕組みが個人の選択肢を狭める現実が、日常の細部から浮かび上がり、読者の立ち位置を問い返す。

私の生活に意味のある間は死ねない。
英訳
I cannot die while my life means something.
サマリー
引用文の概要と背景
この一文は、17歳の著者が祖母の郷里(福島県)で地主の娘として見聞きした、貧しい小作農たちの悲惨な生活を描いた本作の終盤に登場します。
文脈
すぐ目の前で、極貧の中でまともな治療も受けられずに村人が死んでいくという過酷な現実を突きつけられ、主人公(=著者)が自身の生と死について深く思い悩む場面での内なる叫びです。直後には「けれども私の今直ぐ傍では、こうやって二人も死んでいる」と続きます。
解説
特権的な階級にいる自分と、救いようのない貧困の中で亡くなっていく農民たちとの絶望的な格差を前に、彼女は激しい罪悪感と無力感に苛まれています。 「私の生活に意味のある間は死ねない」という言葉は、彼らの理不尽な死を目の当たりにして、恵まれた環境にある自分の命をただ浪費するのではなく、「意味のあるもの」として生き抜かなければならないという悲痛な決意表明です。単なる同情や感傷を超え、後に社会運動やプロレタリア文学へと向かっていく彼女の、思想的覚醒の原点がこの言葉に凝縮されています。
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